オーエックスエンジニアリングの「ZZR」を改造して、FreeWheelが装着できるようにしました。
2022年4月14日、オンラインショップの問い合わせフォームを介して、FreeWheel(フリーウィール)の購入を検討されている、千葉県にお住まいの方からご相談をいただきました。
OX社(オーエックスエンジニアリング)の車椅子を使っています。ステップは「フットレストジョイントタイプ」です。
この車椅子に、フリーウィールつけることが可能でしょうか?
オーエックスエンジニアリングの車いすのフットレストは、大きく分けて「ジョイントタイプ1」と「セパレートタイプ1」に区分されます。
更にジョイントタイプのフットレストには「プレートジョイント std1」「プレートジョイント hi2」「パイプジョイント std1」の3種類が存在するため、いただいたメールだけではどのタイプなのか特定できませんでした。
プレートジョイント std
プレートジョイント hi
パイプジョイント std
もとい、基本的に FreeWheel(フリーウィール)は【リジット車椅子用】となっているため、オーエックス製の車いすであれば「REVシリーズ1」のリジット車(固定車)以外のフォールディング車(折りたたみできる車種)には対応していません(汗)
また、FreeWheel(フリーウィール)には「折りたたみ車椅子用アダプター」というオプションアイテムがあるのですが、オーエックス製をはじめとしたアクティブタイプの車いすに多く見られる複雑なフレーム形状には対応していないため、それを使って装着することもできません(汗)
ちなみに、2020年11月にオーエックスエンジニアリングから「CROSSWHEEL(クロスウィール)」という製品が発売されているのはご存知でしょうか?
▼OX製、着脱式フロントホイール「CROSSWHEEL(クロスウィール)」
>> https://e-if.jp/wheelchair/wheelchair_item/ox-crosswheel/
クロスウィールは一見すると「FreeWheel (フリーウィール)」や「Stricker Lomo 360(シュトリッカー ロモ 360)」、COM泉屋さんの「快適AQURO 」などと似通った製品に見受けられますが、そのコンセプトは明確に異なる製品です。
いずれの製品も<車いすのキャスター車輪(前輪)を宙に浮かせて走行性を高める>という点では共通していますが、従来の製品群は “12インチ” 以上の大径車輪を装備して、悪路の走破性や、段差の乗り越えなどを重視しているのに対し、クロスウィールは敢えて “8インチ” という小ぶりな車輪を採用することで、日常生活での快適な取り回しを重視したものになっています。
もし、FreeWheel(フリーウィール)に特別なこだわりがなければ、OX製の車いすを使われている方には「CROSSWHEEL(クロスウィール)」を推奨させていただきますので、最寄りのオーエックス販売店に相談してみてください♪
※CROSSWHEEL(クロスウィール)はメーカーの意向で ”対面販売限定” となっているため、イフのオンラインショップには掲載(販売)することができませんことをご了承ください。
結果的に、オーエックスのフォールディング(折りたたみ式)車いすには、FreeWheel(フリーウィール)は装着できない・・・という話しの流れになってしまいましたが、、、
実は、イフのお客様の中には『車いすが折りたためなくなってもいいから、どうしてもフリーウィールを使いたい!』という無茶振りをする強者(つわもの)もいらっしゃいまして・・・(笑)
本記事のタイトルから既にお察しのとおり、オーエックスの「ZZR」というフォールディング(折りたたみ式)車いすをフリーウィールが装着できるように改造したという、一風変わった事例をご紹介させていただきます。
O様からの相談(無茶振り?!)
札幌市にお住まいのO様は、イフを創業して間もない頃に手動運転装置の改造をさせていただいて以来、長いお付き合いをしている方です。
そのO様から、正月明けに電話があり、「ここ最近、腱鞘炎がひどくて愛車(スバル・レヴォーグ)へのトランスもままならないので、車いすでかなりの広範囲を自走で移動している」「夏場はいざしらず、冬になるとなかなか思うように身動きがとれず苦労している」「雪道での移動を楽にする方法やアイテムはないものだろうか?」などといった話をお聞きしました。
そこで、ウィンターアイテムの三種の神器(仮称)である、[スタッドレスタイヤ(ささら)][おでかけリング ][ホイールブレード ]に加え[フリーウィール]をご紹介しました。
加えて、同じ札幌市にお住まいで、O様からの紹介で関わらせていただいている F君に、折しもこれらのアイテムを納品して、ヤマハのJWX-2(アシスト電動車いすユニット)と併用して活用していることをお伝えし、その使用感や一長一短は直接聞いてもらうことになりました。
数日後、F君と会って諸々を試した結果、スタッドレスタイヤ(ささら)とフリーウィールがあれば行動範囲が倍増する!!とのことで、正式にご用命をいただいたのですが・・・
O様が所有している車いすは全てOX製のフォールディングタイプ(折りたたみ式)でした・・・(汗)
が、、、
O様からの『車いすが折りたためなくなってもいいから(パイプジョイントを溶接してつなげてしまってもいいので)、どうしてもフリーウィールを使いたい!』という鶴の一声があり、二つ返事で「お任せください」と相成りました(笑)
OX・ZZR をお預かり
その数週間後、内藤が北海道運輸局の「北海道におけるバリアフリー施策の増進に関する地域連絡会議」に参加するため札幌に出向いたタイミングに合わせて、札幌駅周辺でO様と合流して車いすをお預かりしました。
改造を施すことになった車いすは、以前メインで使用していたという、オーエックスエンジニアリングの「ZZR」で、内藤がそれに座ってJR北海道の汽車に揺られながら帯広まで戻ってきて、イフにピットインしました。
ZZRの改造作業スタート!
O様の「ZZR」に装着されていたフットレストは「パイプジョイント std」で、車いすを折りたたむとフットレスト中央のジョイント部分が連動して跳ね上がります。
その構造が故に、フットレストに固定するフリーウィール(リジット車用)を装着することができないのです。
今回は、そのジョイント部分を繋いでしまい、跳ね上がらなくする(=車いすもたためなくなる)という改造を実施します。
さっそく、フットパイプの連結部分を切り離し、滑り止めゴムも除去してバラバラにしていきます。
フットパイプの前側には、肉厚のステンレスパイプを被せるように装着します。
ステンレスパイプの内部を研磨し、フットパイプ側はイビツな形を研磨し、ほぼ真円に近づけることで、被せパイプが適度な圧入代になるように調整加工しました。
フットパイプ後方の連結は、前側と同じ被せる方式ではフリーウィールのリヤエンドの掛かりが浅くなり外れやすくなってしまいます。
そのため、鉄の無垢材を旋盤で削り出して、フットパイプの中に刺さりこむような形のアダプターを製作しました。
製作した特注のアダプターは、塗装処理をした後で、中央の凸部分にはノンスリップテープを貼り付けました。
両端の白い部分はシールテープで、これによりパイプ内のガタつきをなくしています。
いよいよ連結部の固定作業です♪
一旦取り外していた滑り止めゴムを再度挿入し、連結準備は万端です!
前側のステンレスパイプを片側から圧入し、ズレ防止のためのボルトを仮留めします。
パイプ後方の連結アダプターも挿入します。
左右のフットパイプを連結します!
ズレ(左右の開き)防止のボルトには、ステンレスボルトとし、締め付けにはロックタイト赤(高強度)を塗布して緩みを防止します。
フットパイプの左右連結完了~~~♪
連結が完了したフットパイプを、レッグパイプに接続します。
OXの車いすのこの部分には銅製のカラーが挿入されていますが、フリーウィールを装着したフットパイプ部の力がここに集中するため、将来的にはこの部分が変形することが予想されます。
レッグパイプ(車いす側)への再取付完了♪
レッグパイプとフットパイプの取付部のボルトはOX純正のスチール(鉄)製のものから、強度のあるステンレス製に変更済みです。
片側にネジが切られていて、ボルトだけでも固定出来るのですが、更に強度を高め、且つボルトの脱落を防止するため、裏側にはロック用のステンレス製の袋ナットを追加しました。
(ちょっと一息)
ハンドリムを留めているボルトが1本脱落していたので、タイヤを外して新しいボルトを装着しました。
この後で、左右の大車輪と、フリーウィールのタイヤ全てのエア圧調整をし、次はいよいよフリーウィール側のセットアップを開始します!
オーエックスのパイプジョイントフットレストの奥行き寸法1 は約100mmですが、フリーウィールが装着可能なフットレストの奥行き寸法は[102mm~175mm]となっているため、微妙に基準外となります。
そこで、フリーウィールの「リヤエンド」という部品に加工して対応させます。
この作業についていは、こちら ↓ の活用事例記事で詳しく紹介していますので、気になる方は参考にしてください。
フリーウィール使用時(前進時)はキャスターが上がる仕組みのため、前後座高が変化します。
今回、O様はフリーウィールを常用使用するとのことですので、キャスターフォーク部の調整穴を下から上にずらすことで、前座高を10mm下げさせていただきました。
これにより、フリーウィール使用時に前座高が上がっても、座位姿勢の違和感が少なくなります♪
前座高変更(10mmダウン)に伴い、キャスター角度が変わりましたので、こちらもジャストな角度に再調整させていただきました。
ところ変わって、こちらは何やらパイプ材をゴソゴソと取り出して・・・
パイプベンダーを使い、クイッと曲げていきます♪
計算通りのジャストな曲げに拍手です(笑)
この後で、両端の余り部分をカットし、事前に用意してあった、介助ハンドルの中に挿入するアダプターと溶接し接合します。
ウレタン焼付け塗装でマットブラックに仕上げて完成したパイプ部品です♪
コの字パイプの両先端には介助ハンドルへ挿入されるサイズの異型パイプを溶接にて接合済みです。
車いす(介助ハンドル部)への取付完了~!
挿入後、左右1箇所ずつタッピングビスで完全固定し、グリップスポンジを剥いた接合部分には伸縮チューブで見た目良く仕上げました。
背パイプ左右と、レッグパイプ左右がしっかりと連結(固定)され、更に、クロスフレーム部分のボルト等も全て増し締めした効果により、OXの独特のグニャグニャ感はかなり軽減され、固定車っぽい?乗り心地に近づきました(^^)
当初、O様からは「フットレストのジョイント部分(中央部分)を溶接しちゃってください」という要望でしたが、アルミパイプを溶接しただけでは必要な強度が確保できないため、このような手法をとることで充分すぎる強度を実現しました。
完成~~~♪
フリーウィール使用時も、非装着時も、どちらでもジャストな装着感になるように各部の微調整を施し、フリーウィールの取り付けが全て完了しました!!
リジット化したフットレストパイプに、フリーウィールがしっかりクランプ固定されています。
リヤエンドは、左右の滑り止めゴム間(連結アダプター部)に自然と収まる感じで、取付時に中央を探して悩む心配はございません。
正面から見るとこんな感じで、パッと見、フォールディング(折りたたみ)車いすになんで装着されているんだろう?とツウ(マニア)は不思議がること請け合いです(笑)
介助ハンドルを連結した部分には、パーチポスト(フリーウィールの格納用の部品)を装着しました。
パーチポストにフリーウィールをセットした状態です♪
背面にフリーウィールを格納(収納)する動作はちょっとした慣れやコツが必要ですが、これでいつでもどこでもフリーウィールと一緒に過ごすことが出来ます♪
<注意>Freewheelの先端に付いている ”ゴムキャップ” の中には直進性を司る「ボール、スプリング、ノブネジ」などが付いており、この部分に強い衝撃を加えると破損する危険性がありますので、パーチポストにフリーウィールを格納する際には、落とさないように充分ご注意ください!
イフの工場前で最後の記念撮影。
既に(先立って納品した)スタッドレスタイヤと組み合わせることで、こんな凍結路面もへっちゃらとなること請け合いです♪
こんな雪山を登って行けるかどうかは・・・? O様の腕力次第です(笑)
宅配便で納品
O様宅へ完成した車いすとフリーウィールを宅配便でお届けすべく、梱包作業をしています。
当初は、製作したフットパイプは取り付けせずに、車いすを折りたたんだ状態でお渡しして、納品後に組立作業をしてもらう予定でしたが、、、それはそれで大変なので、大車輪だけを外した状態で、このような大きな段ボールで送らせていただくこととしました! 到着後は車輪をつけるだけで使用開始OKです♪
ちとデカイお荷物ですが・・・(笑) 西濃運輸で出荷させていただきますので、到着を楽しみにしていて下さいね~~~!
それから2年後・・・
FreeWheel(フリーウィール)と足台を改造したZZRを納車してからちょうど2年が経過したある日(正月明けに ww)、O様から電話がありました。
フリーウィールで前進しても車いすの前輪が上がらなくなってしまったとのことで、あれこれやり取りして原因究明をしたところ、改造時に懸念していたフットパイプとレッグパイプの接合部分の遊び(ガタつき)が出てしまっていることが判明しました。
加えて、レッグパイプとのジョイント部分に歪みが生じていたこともあり、今回はレッグパイプとレッグサポートを完全に溶接する方法で強化することになり、再度ZZRをお預かりして施工させていただきました。
この2年間、愛車のスバル・レヴォーグの走行距離はほとんど伸びていない代わりに、フリーウィールはかなりの頻度で常用していたとのことで、すっかり「無くては困る FreeWheel(フリーウィール)」になっていますよ~とのことで、とても嬉しい限りでした♪
今回ご紹介した活用事例(改造事例)は、ちょっと特殊なケースかもしれませんが・・・
このようなワイルドなチェアウォーカーも(北海道には)いるんです、、、という、ご紹介でした(笑)