独創的な進化を続ける スウェーデンのパンテーラ社(Panthera AB)の車いすは、快適で疲れない、体にフィットする軽量な車いすの代名詞と言っても過言ではない逸品です。
スウェーデンのパンテーラ社の創業者は、もとはバイクのレーサーだった Jalle Jungnell(ヤッレ・ユングネル)。
1976年、レース中の事故で胸髄損傷(Th5)を負った彼がスウェーデンで始めた事業は、「自分が乗りたい車椅子を作る」というものでした。
1979年にヨーロッパで初めての固定フレーム車椅子「JPS」を開発。1983年には、モジュラーシステムのスポーティな軽量車椅子「Spinner(スピンネル)」を発売し、ヨーロッパで大人気。
そして1989年、パンテーラ社を独自に設立し、「パンテーラ」の発売を開始します。この新しい車椅子を開発するに当たって、できるだけ軽い力で動く車椅子そして、長時間快適に座ることができる車椅子をめざしました。
パンテーラの生みの親である Jalle Jungnell(ヤッレ・ユングネル)氏が、「自分が乗りたい車いす(をつくる)」として掲げた3つの条件
- Driving=軽い操作性
- Seating=座位の快適性
- Lifting=車載の容易さ
これらは、アクティブな車いすユーザーであれば、誰もが希望する理想像ですが、パンテーラの車いすは、それを高いレベルで実現しています。
シンプルで美しい北欧デザイン
徹底的に無駄を省いたシンプルで美しい北欧デザインのフォルムは、その特徴的なフレームワークに象徴されます。
アクティブ系の車いすの多くは、存在感のある太いフレームデザインの製品が多くを占める中、パンテーラは一貫して直径19mmという極細のパイプでメインフレームが構成されています。
その理由は、フレームに採用されている材質の違いによるものです。
一般的に軽量車いすと言えば、アルミニウム・マグネシウム・チタンなどの非鉄金属素材や、カーボンファイバー(炭素繊維)をイメージしますが、パンテーラは「クロムモリブデン鋼 1」という “鉄製” のパイプが用いられています。
クロムモリブデン鋼は、硬さと靱性 2 に優れ、耐摩耗性も高い素材で、スパナなどの工具によく使用されるほか、自動車や航空機の部品、レーシングカーのロールケージ、自転車のフレームにも使われています。
クロモリフレームのロードバイクは、洗練されたシャープで美しい外見が魅力で、優れた弾性によりフレームが適度にたわむため路面からの衝撃を吸収しやすく、乗り心地が良く疲れにくいため、長く愛用できるモデルとして人気を博しています。
このクロモリロードバイクとパンテーラ車いすの魅力は相通じるものがありますが、重量に対する部分だけは異なっています。
クロモリロードバイクはアルミやカーボン製のモデルより重たい傾向にありますが、パンテーラはこの限りではありません。
なぜなら、パンテーラのメインフレームに用いられているクロムモリブデン鋼は、肉厚0.6mm 3 という他に類を見ない特別誂えの鋼材が使われていて、それが超軽量化を実現する秘密となっています。
このクロモリ鋼は、肉厚が薄すぎて通常の溶接が困難なため、スウェーデンのカルマル市にある関連会社 Rollmek AB の熟練した溶接工の手作業により、独自の手法で “ろう付け 4” されています。
更にパンテーラのクロモリフレームは軽いだけではなく、その絶妙なウェイトバランスにも驚かされます。
そのバランスの良さは、漕いでいる時はもちろんですが、Lifting(車載の容易さ)も計算し尽くされていて、フレーム下部の重心位置にあるパイプを持つことで車いすを自由自在にコントロールできるように配慮されています。
快適で疲れないのは、漕いでいる時だけではありません。Seating(座位の快適性)も探求されたパンテーラは、独自の人間工学に基づいた工夫が凝らされていて、体にフィットするシーティングが可能です。
パンテーラに初めて座った方は皆、口を揃えて「目線が高くなった(姿勢が良くなった)」と驚きます。
Driving(軽い操作性)を実現するための様々な工夫も盛りだくさんで、生活路面を考慮したキャンバー角度や、通常よりワンサイズ大きなハンドリムが標準装備されているなど、数え上げるとキリがありません。
S3/U3用に開発されたキャスター車輪なども特筆もので、ハード路面の走行時はトレット面の中央の凸部が地面に接地し軽快な動きを可能とし、柔らかい路面ではトレットの全面が接地して埋まりづらい構造となっています。
加えてベアリングを覆うような形のカバーが装着され、髪の毛などの異物が巻き込みずらくなっています♪
パンテーラは、一見すると無駄がなくシンプルですが、実は随所に創意工夫が施されているのが面白いところで、そこを強く主張しないのが玄人好みと言われる所以かもしれません。
後述の「Panthera X」が発売されて以来、それがパンテーラの代名詞的な存在になってしまっていますが、パンテーラの真骨頂はクロモリフレームのモデルであるとイフでは考えています。
ユーザーの身体状況やチェアスキルに応じて、多種多様なクロモリフレームのモデルがラインナップされていて、どれも似たようにデザインに見えてしまいますが、詳しく比較(ご説明)していくと、それぞれ意味のある違いが明確に設けられている秀逸な製品群です。
走る気分が高まり、なにげない移動が感動に変わる。最高の自己表現のためにパンテーラをどうぞ!
世界最軽量 Panthera X
パンテーラ車いすの代名詞になっている「Panthera X(パンテーラ・エックス)」は、量産される車いすでは世界最軽量という究極のモデルです。
カーボンファイバー製のフレームを採用することで異次元の軽さと強度を実現。その軽やかな動きは、まるで氷上を滑るようです。
車輪を外した状態のトランスポート重量はわずか2.1kg 5 という異次元の軽さで、容易な車載を可能にします。
車いすを極めたい方にとっては、所有するだけでステータスとなる Panthera X ですが、カーボンファイバー製のフレームは転倒などの衝撃で破損するリスクが否めないため、日常着ではなく、特別な日に纏うドレスのような存在なのかもしれません。
Panthera to the next stage…
1989年の創業から32年に渡って独創的な進化を続けてきたパンテーラですが、2021年11月に ペルモビール(Permobil AB)と買収契約を交わして、同社の傘下に入りました。
Panthera社買収に関する合意のお知らせ
PERMOBIL ACQUIRES PANTHERA
両社は、共にスウェーデンの起業家によって設立され、イノベーションと開発を強力な推進力としながら、ユーザーに対する同じ情熱を持ち、同じ価値観を共有しています。
電動車椅子のリーディングカンパニーであるペルモビールと、超軽量アクティブ車いすのリーディングカンパニーであるパンテーラが製品や知識を共有しながら一緒に旅を続けることは、非常にエキサイティングで刺激的なことあり、世界中のユーザーにとって多くのポジティブなことにつながると考えています。