パンテーラ純正の「テトラ・クイック・リリース」を松永製作所のマックスプレジャーの車輪に取り付けしました。
松永製作所のアクティブタイプの車いす「AIRBRID(エアブリッド)」を駆る abeさんから「自分で車輪の着脱ができるようにしたい」というご相談をいただきました。
通常、着脱式の車輪を付け外しする際には “クイックリリースシャフト” の先端部分を指で押しながら車輪を着脱する必要がありますが、頚椎損傷のabeさんは手指に障害があるため、その動作は簡単ではありませんでした。
自動車の運転をするabeさんは、車いすから運転席に移乗した後で、車いすを折りたたんで自分で載せ降ろししていましたが、近い将来 リジットタイプの車いす1 の購入を検討していることもあり、今のうちからエアブリッドでその練習(折りたたまずに、車輪を外して載せおろしする)をしたいというのがその目的でした。
残念ながら・・・日本の車いすメーカーでは、そのようなニーズに対応できるオプション部品等は供給されていませんが、海外では「Quad Quick Release Axle(クワッド・クイック・リリース・シャフト)」や「Tetra quick release(テトラ・クイック・リリース)」などという呼称で様々なサポートアイテムが販売されています。
それらのサポートアイテムはは、一部の専用に作られた車輪(ホイール)を除いてアドオン(後付)可能な製品でみると、大きく2つのタイプに分かれます。
① プルタブ式
1つ目のタイプは、“クイックリリースシャフト” の先端部分がプルタブのような形状になったもの です。
プルタブのような丸いリング状の形をした部分が倒れた状態が通常状態(走行時)で、そのプルタブを起こすとクイックリリースシャフトのロックが解除され、そのまま(指でボタンを押さなくても)車輪の着脱ができるという、最も操作が簡単な製品(方法)です。
但し、この製品は、車いすの クイックリリースシャフトの先端が “スモールボタン” のタイプ であれば、付属のナットを外して「プルタブ状の部品 」に交換するだけでよいのですが、クイックリリースシャフトの先端が “ラージボタン” のタイプ の場合は、必要な長さを実測(計算)しながらジャストな長さのスモールボタンタイプのシャフトを別途用意する必要があります。
また、車輪を装着しようとする際にシャフトが抜けてきてしまうため、シャフトをハブ2 に固定するという追加改造が必要(推奨)ということや、プルタブ部分がハブからそれなりに飛び出すため、車いすの全幅が広くなってしまうなどの留意点があります。
② レバーロック式
2つ目のタイプは、 “クイックリリースシャフト” の先端部分をレバー状の部品で押したままの状態でホールドさせるタイプ です。
文章で説明しようとすると、なかなか難しいのですが・・・その構造は実にシンプルです。
スポーク部に装着した金属製のレバーを回転させ、支点と反対側のスポークにレバーの先端を引っ掛けることで、レバーの途中(裏側)に付いている凸部分が “クイックリリースシャフト” の先端を押した状態となり、そのまま(指でボタンを押さなくても)車輪の着脱ができるという仕組みです。
多少見た目のゴツさ?は否めませんが、車いすの元の状態を一切変えることなく、ボルトオンで完成するという手軽さが人気です。
このタイプの製品は、スウェーデンのパンテーラ車いすの純正アクセサリー(オプション部品)が有名で、同社の日本法人であるパンテーラ・ジャパン株式会社 が国内販売しているため比較的簡単に入手することが可能で、イフのオンラインショップでも掲載させていただいております。
今回abeさんは、練習用ということもあり、一番手頃で簡単な パンテーラ純正の「テトラ・クイック・リリース(標準車輪用)」を取り寄せして、abeさんが冬用にスタットレスタイヤを組んで使用している、マックスプレジャーの標準スポーク車輪に装着することに相成りました!
パンテーラ・ジャパン様に部品を注文して数日後・・・早々と部品が届きました!ヮ(゚д゚)ォ!
さっそく、バネの付いたネジ部分と、金属製のレバーを仮組みしてイメージを確認。
ナットの締め加減でバネのテンションを変えることで、ロックの具合や操作フィーリングを調整できるようになっています。
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ここでちょっと余談ですが・・・車いすの一般的なスポークホイールには「ラジアル組み2」と「タンジェント組み2」という二種類のスポークパターンが存在します。
パンテーラの標準スポークホイールは「タンジェント組み」になっているため、純正アクセサリー(オプション部品)の「テトラ・クイック・リリース」は、そのクロスしたスポーク部分に装着するような作りになっています。
対して、松永製作所のマックスプレジャーの標準スポークホイールは「ラジアル組み」になっているため、スポークが交差する部分がなく、そのままでは「テトラ・クイック・リリース」の支点部分の取り付けができません(汗)
でも安心してください!(想定内です)
焦らず、材料倉庫から「アルミのフラットバー」を用意してきて・・・
こんな形 ↓ の部品を作ってみました♪
それを、ラジアル組みになっている2本のスポークにタイラップ(結束バンド)で固定して、支点部分を設けたのです。
これでバッチリ、「テトラ・クイック・リリース」が装着できました!
裏側(ホイールの内側)から見ると、このような感じで組み付けられています。
車輪を着脱する時以外は、リリースボタンを押すための金属プレートは先端部分をスポークに引っ掛けておいて、不用意に金属プレートが動かないようにしておきます。
引っ掛けておく場所は、隣接している(引っかかる位置であれば)どのスポークでもOKです。
マックスプレジャーの標準車輪は クイックリリースシャフトの先端が “スモールボタン” のタイプ が採用されていて、その上にゴム製のキャップが被さっていますので、それを外してボタンを露出させた状態で使用します。(マックスプレジャーからMPにモデルチェンジした際に、ラージボタンタイプに変更されています)
リリースボタンを押すための金属プレートを回転させ、金属プレートの先端を支点と反対側のスポークに引っ掛けて固定します。
この状態でクイックリリースボタンがしっかり押されたままの状態になっているため、そのまま(指でボタンを押さなくても)車輪の着脱ができるという仕組みです
イフの MP A-MAX で正常に着脱できるか念入りにチェックをして、問題なく簡単に車輪が着脱できることを確認しました!(この赤いA-MAXは abeさんの車いすではありません)
翌日、abeさんに完成した車輪を納品させていただきました。
近い将来のリジットタイプの車いす導入に向けて、エアブリットを折りたたまずに車輪を外して車載する練習をするとのことで、゚ファイト━━(ノ゚д゚)人(゚Д゚ )ノ━━!!!! と、エールを送らせていただきました!
最後に・・・
この活用事例記事が、手指に障害のある方が「リジットタイプの車いすに乗りたいけど、車載の時に車輪の付け外しができないよなぁ・・・」とお悩みの方の少しでも参考になれば幸いです。