簡易電動車いすの購入を検討されているお客さまから「車の後部座席の位置に、人力で車いすを “なるべく軽く” 積み込める方法はないでしょうか?」というご相談を受け、あれこれ試行錯誤した結果・・・ 後部座席のスペースに着脱可能なフラットな床面をワンオフで製作しました♪
遡ること数週間前・・・
どのようなアプローチ(改造)が、今回のテーマである「人力で車いすを楽々乗せ降ろしする」ことが可能になるのか検証すべく、お客さまに来店していただきました!
お客さまの愛車は「ホンダ フィット(GE8型)」
お客さまが購入を検討されている簡易電動車いすは、アイシン精機様の「タオライトⅡ」で、バッテリーを除いた重量は約22kg!
現在お使いの普通型車いすは、フィットの後部座席の背もたれを前側に倒して、その上に載せる方法をとられていたとのことで、今回用意したデモ用の「タオライトⅡ」を、まずは同様の方法で乗せてみることにしました。
簡易電動車いすの完成車の中では比較的、軽量のタオライトですが、矢張り20kg以上の車いすをこの高さまで持ち上げるのは結構大変でした(汗)
前倒しした後部座席の背もたれの上にはしっかりと乗ったものの、、、走行中に後方に倒れてしまう可能性もありそうです(汗)
そこで、発想を変え、背もたれは倒さず、フィット独特の構造である、後席の座面跳ね上げ機構を使い、空いたそのスペースに車いすを乗せてみることとしました。
これなら、車いすを完全に持ち上げなくとも、前輪を持ち上げる感じで乗せることが出来そうです。。。
後席の座面を跳ね上げて出来たスペースは、余裕の広さですね♪
但し、そのスペースには凹凸が多く、また、出入口付近が大きな段差になっているため、想像していたほど楽に乗せ降ろしすることは出来ませんでした・・・(汗)
お客さまとあれこれ打ち合わせをした結果、この後席座面を跳ね上げて大きく空くスペースに、その凹部分を埋めてフラットにするための、着脱式のボードを製作するに決定しました!
お客さま自身で日曜大工的に簡易的なもの(発泡スチロールやダンボールを駆使して)で行う方法も提案させていただきましたが、長く使うものなのでしっかりしたモノを製作して欲しいとのことで、後日改めてお車をお預かりして施工することに相成りました。。。
~それから数週間後~
作業予定を組んだ日時にお車をお預かりし、いよいよ改造作業のスタートです!
まずは製作するフラットボードの目標高さを検討し、確定しました。
運転席と助手席を前後スライドさせながら、フラットボードの面の広さを検討し、木材を切り出すための型取りをしていきます。
型取り後は、その形にランバーコア合板をカットし、徐々に成形してゆきます♪
もちろん、イフで使用している材料はホルムアルデヒド対策最上級「F☆☆☆☆(フォースター)」を採用しています。
凹部を埋めるため嵩上げフロアとするべく、必要最低限の位置にゲタを取付ます。
必要な強度を確保しつつ、着脱を考慮し極力軽く仕上げることを目標としました。
ランバーコア合板の表面には、耐久性を考慮し、店舗・業務用重歩行用床材の “硬質ロンリウム” という床材を一面に貼り付けました。
表面には小さい凹凸があり、濡れた状態でも滑りづらくなっています♪
車いすを乗せ降ろしする際に最も痛みやす両端部分には、アルミのアングル材を加工して、ガードを設けました。
じゃ~ん!着脱式フラットボードの完成です♪
車側には、製作したフラットボードが接触する内装部分に、傷防止や擦れによる異音軽減のため、特殊なガードシートを貼り付けて、こちらも準備OK!
完成したフラットボードを車内に乗せるとこんな感じになりました♪
フイットだけにジャストフィットですね♪ 彡(´∀`;)彡ヒューヒュー
それではさっそく、簡易電動車いすの乗せ降ろしテストをしてみましょう!
タオライトのデモ車は返却してしまったので、イフの代車でヤマハの電動ユニットが装着された類似寸法の車いすで確認します。
製作したフラットボードは、フィットの乗降口の高さ=約36cmと同一です。
この高さ(約36cm)だと、車いすの前側を持ち上げると、その前輪がギリギリ乗る高さとなります。
その前輪が乗った状態で、車いすの介助ハンドルを持ち上げると・・・
あら不思議?!
とても軽い力で車いすを持ち上げることが出来ました!
これは、テコの原理と同じで、車いすの前輪キャスター部分が支点となるため、車いすを完全に持ち上げる時の約半分くらいの力で持ち上げることが出来るという仕組みなんです♪
現在は廃盤となってしまった商品ですが、カーメイト様が製造販売していた「車いす積み降ろしキャリア」という製品がこの原理を利用して、ワンボックスカーの荷台部分に車いすを楽に乗せるアイテムとしてありましたが、それをイメージしながら、後席部分でその原理を応用したのです(^^)
後輪がフラットボードに乗るまでは力を抜くことが出来ませんが、完全に持ち上げている訳ではないため余計な力を使う必要がありません♪
フラットボードの効果で、車いすを車内に押し込むのも楽々です♪
いかがでしたか?
立位のとれない方や、車いすを持ち上げること自体が困難な方は難しいかと思いますが、今現在、車いすを “なんとかこんとか苦労しながら持ち上げて乗せ降ろしされている方” などであればこのような方法をとることで、大掛かりな装置を付けたり、車両側の改造をするなどをしなくとも、今までより楽に車いすの乗せ降ろしが可能となるかも知れません。。。
お使いの車いすの状況確認や、実際の作業には現車を持ち込んでいただく必要があることなどから、遠方の方には現実的ではないかもしれませんが、この施工事例を参考にしていただき、皆さまの地元で同様の作業にチャレンジしていただければ幸いです(^^)
~番外編(おまけ)~
お客さまとあれこれ試行錯誤している中で、「スロープを使って、後席部分に乗せることは出来ないか?」ということも検証してみました。
後席の座面を跳ね上げた状態では、その乗降間口(横幅)が狭いため市販のスロープをかけることは出来ないため、背もたれを前倒しした状態で、その背もたれの上にスロープを設置するという案です。
前倒しした背もたれの地面からの高さは約52cm!
ここに1メートル程のスロープをかけるとこんな感じとなります。
実際に車いすをスロープを使って乗せようとするも・・・
車いすをたたんだ状態では前輪キャスターが正常に機能しない(左右が干渉してしまう)ことや、その勾配が急なため結構な力が必要であること、駐車スペースがかなり必要なこと、スロープを収納するのも大変なこと、等々から断念しました(汗)
そんなこんなの試行錯誤を経て、今回のフラットボード製作に至った次第です。
他にも「こんな方法はどうだろう?」といったアイディアがございましたら、皆さまご一緒にあれこれ模索してみませんかぁ?
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!