2014年の夏、イタリア製の車いす「Progeo TEKNA ADVANCE(プロジオ テクナ アドバンス)」のデモ車を昭和貿易様からお借りして、皆で試乗をした記事はご覧になりましたか?
その試乗会にて、誰よりもプロジオ車いすの興味を抱いて、熱心にテクナアドバンスを吟味していたのは・・・内藤がいつも頼りにしていて、仲間として長いお付き合いをさせていただいている、abeさんでした。。。
abeさんは、オーエックスエンジニアリングのREVや、松永製作所のマックスプレジャーなどを所有しており、いずれも手入れが行き届いていて7年以上経過しているとは思えないほどのベストコンディションを維持していますが、すでに廃盤になっている旧車であり、全体的な消耗も進んできていることから、そろそろ新しいマシンを導入したいと目論んでいたのです。
abeさんが、新しい車いす求めるものは・・・
1.軽量であること
2.長時間の座位が楽であること
3.軽く漕ぐことができ、意のままに動けること
4.屋外走行で、体に不快な振動が極力少ないこと
という、シンプルなものでした・・・が、、、(これって、めっちゃハードル高いッス〜(汗)…と思いながらも)その期待に答えるべく、奮闘する内藤の格闘の日々が始まったのです…
これらの要望は、車いすユーザーであれば誰もが理想とする内容ですが、多くの方は抽象的なイメージであり、現在使っている車いすとの対比を意味するのに対し、abeさんは、これまで様々なメーカーの車いすの試乗を重ね、パーツなどを一緒に詳しく調べながら、ご自身の愛車を幾度となくカスタマイズし、求める理想の形に少しずつ近づけてきていたこともあり、その目標点はかなり明確で具体的なものでした。
打ち合わせの内容は多岐にわたり、ここでは書ききれないほどですが・・・ 一番大きなポイントとして、abeさんの要望を高次元で叶えるため、これまでのフォールディンクタイプ(折りたたみ可能な車いす)ではなく、リジットタイプ(固定式車いす)を採用することでした。
頚椎損傷で手指の自由が効かないabeさんにとって、その選択をするにあたり、最大の課題である「クルマへの積み下ろし」(リジットタイプの車いすは折りたたみができないため、車載時にタイヤを着脱する必要がある)は、日本では馴染みが薄いですが欧米では一般的に流通している「Quad Quick Release Axle(クワド クイック リリース アクスル) 」を数種類入手し、それを既存の車いすに装着して検証と練習を繰り返すことでクリアしました。
リジットタイプ(固定式車いす)がOKとなると、大きく選択肢が広がりましたが、国産車ではしなやかな動きという部分で満足する車いすが見いだせなかったことから、外車のラインナップを中心に各国の車いすを模索することに・・・
abeさんの要望を満たす、最有力候補として、スウェーデン製の「パンテーラ(Panthera)」も当然のごとく試していただきましたが・・・
パンテーラの座位安定性や、軽快で滑らかな操作感、路面の凹凸の吸収性などは、いずれも異次元の素晴らしさでしたが、細かい部分のサイズバリエーションが乏しく、abeさんの要望を100%満足させるものではありませんでした・・・
そんな試行錯誤の中、2014年の夏に試乗したイタリア製の車いす「Progeo TEKNA ADVANCE(プロジオ テクナ アドバンス)」のパフォーマンスの高さが脳裏をよぎり、あれが Progeo(プロジオ)のリジット車だとどうなるんだろう。。。という妄想が膨らみました。
残念ながら、昭和貿易様では数多くある「Progeo wheelchairs 」の多彩なラインナップの中から、当面はフォールディンク車(折りたたみ車)のみを輸入販売するとのことで、未だリジットタイプ(固定車)は日本には輸入していませんでしたが、担当のK氏に相談したところ「イフさんだったら全て自己完結してくれるので、希望の車種や仕様をまとめてもらえれば、特別に輸入しますよ♪」との嬉しいお話をいただき、具体的に Progeo(プロジオ)でプランニングを進めることに相成りました!
とは言え・・・日本では正式に販売されていない製品なので、(当然のことながら)日本語のマニュアルや注文書は一切無く、全てイタリア語の表記です(汗)
なので、先ずはイタリア語を勉強して・・・だと気が遠くなりそうなので、翻訳ツールを駆使しながら、各種情報を一つずつ読み解いていくという地味な作業を進めていきました。
余談ですが、一般的な文章などは翻訳ツールがバッチリ日本語化してくれるのですが、車いすの各部位などの専門用語や部品名の場合、けっこう笑える状態の翻訳になることが多々ありました(笑)
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また、英語であればそれなりに慣れ親しんだ単語も多く、翻訳せずとも相通じるものがあるのですが、ことイタリア語の場合は、さっぱりチンプンカンプンな単語が随所にあって苦労しました。
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どうしても理解できない部分が数カ所あり、半ば諦めかけていた時に、ふと…サイトの右上に言語選択らしきプルダウンメニューを発見し、そこにある「Regno Unito」という見慣れない国名をクリックしてみると・・・ なんということでしょう~、サイトの表記がイギリス英語に変わったではないでしょうか!
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その後、あっという間にほぼ全ての内容がバッチリ理解できたことは言うまでもありませんでした(笑)
そんな遠い国 イタリアに思いを馳せながら、名車プロジオのラインナップを一台ずつオーダーフォームに仮記入しながら確認&精査&検証を重ねていきました。
JOKER
プロジオのリジットフレーム車いすのベーシックモデル。楕円形の断面を持つメインフレームは、アルミニウム合金とカーボンファイバーのどちらかを選択でき、キャスターサポートなどの周辺部品も豊富なラインナップから選択することができます。随所にアジャスト機構を有していて、購入後にユーザーに合わせて調整することができることも人気の秘訣です。
JOKER R2
JOKERの調整式キャスターサポートをアルミフレームと溶接で一体化したモデル。スッキリとしたフロントフレームのデザインは、軽量化としなやかな動きに大きく貢献しています。前座高の大幅な変更は不要だけれども、後座高や車軸位置は乗りながら微調整をしたいという方にとっては最適な一台です。
JOKER ENERGY
JOKER R2から後座高や車軸位置などの調整機構も廃止し、極限まで贅肉を削ぎ落とした楕円形断面のアルミ製一体式 超軽量フレームは、機能美だけではなく、剛性と柔軟性を高次元でバランスされた究極のマシンです。あなただけのためにオンリーワンの車いすを探しているなら、答えはJOKER ENERGYです。
NOIR 2.0
ユーザーに合わせて制作されるカスタムメイドのカーボンファイバー製車いす。モノコック構造で一体化されたそのフレームには一切の無駄はなく、その魅力は美しい外観だけではなく、超軽量・超高剛性・抜群の操作フィーリングとダイナミクスを実現するように正確に設計されています。あなた専用に作られたNOIRは、あなたのライフスタイルを変え、必要不可欠な存在となります。
CARBOMAX
Carbon(カーボン)+Max(最高)=【CARBOMAX】と名付けれらたカーボンファイバーフレームの車いす。 最先端の素材使用に関する研究から生まれたCARBOMAX(カーボマックス)は、細部に渡って最新のテクノロジーを駆使したPROGEOの集大成です。デザイン、軽さ、そして剛性と柔軟性を最高レベルで実現するだけではなく、随所にアジャスト機構を有していて、ユーザーに合わせた最良のセッティングを施すことが可能です。
その後、abeさんとの車種選びは難航しました。
無難にベーシックモデルであるJOKERにすると、重量面でリジット車とするメリットが薄いと考え、前座高の調整は今も不必要なので JOKER R2あたりが妥当かと当初は考えましたが・・・
JOKER ENERGYの無駄を省いた美しさにも憧れ・・・
どうせ購入後の調整を諦めるのであれば、思いきって一体式のフルカーボンファイバーフレームの NOIRまで手を伸ばしても良いのかも・・・などと堂々巡りをしていました。
そんなある日、高嶺の花と考えて候補から外していた CARBOMAX(カーボマックス)の部品展開図を何気に一枚ずつ眺めていて、驚くことに気づきました!
プロジオは、そのホームページに様々な情報が掲載されていて、各車種の部品構成図(部品展開図+パーツリスト)などを全てダウンロードすることができるようになっています。
CARBOMAXはNOIRと同じフルカーボンフレームの上位車種ですが、当初はNOIR同様にアジャスト機構は無いものと思い込んでいたのですが・・・
その部品展開図を詳しく見てみると、ありとあらゆる部分が自由自在に調整できるような構造になっていることが解ったのです!
そして、その調整機構はこれまで内藤が知っているものとは全く異なる創り込みがされていて、驚きと感動の連続でした!!
結果、内藤の独断と偏見と強い希望で、CARBOMAXで詰めたプランニングを進めさせていただくことに決定しました(笑)
プロジオで詳細な仕様を煮詰めていくにあたり、特筆すべき素晴らしい “専用ツール” を活用することができます!
それは【PRODUCT CONFIGURATOR】と呼ばれるプロジオ専用のソフトウェアで、その専用ソフトをパソコンにインストールし、アクティベート(ライセンス認証)すると使用可能となり、それを駆使して希望のプロジオ車いすを “三次元CADシュミレーター” でカスタマイズすることができるのです♪
よく自動車のホイールを選ぶ際に、ボディカラーや選択したホイールに履き替え(着せ替え)されるような単純なものではなく、豊富なプロジオのオプションパーツから希望のアイテムを選択すると瞬時にそれらが装着され、各部の寸法も希望の数値を入力するとそれがリアルタイムで反映され、画面上で “マイ・プロジオ” が作り出せるのです!
もちろん、三次元CADソフトなので、作成途中で360度、絵を回転させながら各部の状態を確認することが可能で、気になる部位間の寸法をソフト上のメジャー機能を使って計測まで出来るのです!
更に便利だった機能として、寸法やパーツのミスマッチなどが起こった場合は、エラー表示がされるため可動範囲の限界の目安を確認したり、各部の干渉具合などをビジュアルでリアルタイムに確認できるという優れものでした!
この専用ソフトにより、図面依頼をして、それが仕上がるのを暫く待って、更に図面を修正して・・・という時間のロスは皆無となり、abeさんと一緒にパソコンの画面を見ながら、既存の車いすとの寸法差などを確認したり、移乗時に手をつくフレーム長を充分に確保したり等々といったことがリアルタイムで行うことができ、あっという間に最終仕様が確定したのです♪
このソフトで出力したデータシートと合わせて、英語版のオーダーフォームに特注希望の内容なども添えて英語で記入し、昭和貿易様に正式発注をさせていただきました。(プロジオの直接代理店の場合は、PRODUCT CONFIGURATOR からネットを通じて発注することが可能のようです)
それから待つこと2ヶ月あまり・・・
2017年11月の秋晴れの某日・・・
日本に初めて上陸してきた、日本に一台しかない「Progeo CARBOMAX(プロジオ カーボマックス)」を、静かぁ〜に、納車させていただきました♪
肝心のabeさんの要望は叶ったのか?といいますと・・・
初乗りをした内藤も、セットアップを終えて試乗したabeさんも、その瞬間に笑いが止まらなかった・・・というとお察しいただけますでしょうか?
abeさん曰く、
このカーボマックスの素晴らしさはとても言葉では表現しようがなく、乗った人だけが解るという感じですね。。。
とのことで、納車から一年が過ぎた今では、カーボマックスは完全に体の一部となっていて、もう昔の車いすには戻れませんとのことでした(笑)
納車にあたり、abeさんには イタリアン・カジュアルな衣装を身にまとって記念撮影をさせてくださいとお願いしたのですが・・・あっさり断れてしまいました(笑)
代わりに、「納車前に好きなだけ写真を撮ってくださいね〜」とのことでしたので、内藤の同級生が経営する、国光写真スタジオ にカーボマックスを持ち込んで写真撮影をしてもらいました!
加えて、またとない機会なので、寒空の下で帯広市内をウロチョロしながら、カーボマックスのある風景をフィルムに収めてきました(デジカメですが(笑))ので、最後にご覧ください。
Progeo CARBOMAX プロモーションビデオ
http://www.rehateamprogeo.com/
Rehateam s.r.l.(イタリア)がプロデュースする自走式車いす「Progeo Wheelchairs(プロジオ)」は、美しいイタリアンデザインの伝統的かつ高品質な職人技で作られた高いパフォーマンスを持つ高級車です。