2011年、室蘭市にお住まいのN様が所有していた愛車のハイエースに 和光工業株式会社様 の車いす昇降用リフト装置「Kリフト」を架装させていただいた時の記事はご覧になりましたか?
それから5年が経過したある日、N様から連絡があり「リフト装置はとても快調だが、肝心のハイエースがだいぶんボロボロになってきてしまい、エンジン修理代などがかさんできた」「時期ハイエース(300系)を待ちたいが、3年後くらいのようで、それまでは持たないと思われるので、来年くらいに現行ハイエースを購入しようと考えている」「車内のレイアウトなどはそのままでOKなので、装置関係の移設をお願いしたい」という内容の相談をいただきました。
勿論、二つ返事で快諾させていただき、各種の下調べや準備を進めながら、N様からの連絡を待たせていただきました。
それから半年後・・・N様はめでたく新車ハイエースをご成約され、その間で進めていた各種の打ち合わせや確認を踏まえて、これまで使ってきたリフト装置などを新車のハイエースに移設することが決定したのです♪
そして、いよいよ移設プラン決行の日となり、室蘭からN様ご家族がイフにご来店いただきました!
久しぶりに拝見したN様のハイエースは使い勝手をよくする改造が盛り沢山で、移設作業にも関係することなので、一つ一つ楽しみながらお話を聞かせていただきながら、詳細なご希望をじっくり確認させていただきました。
N様にはイフの(おんぼろ)ハイエースを代車で使っていただき十勝観光を楽しんでいただくことに。そのまま今夜は市内のホテルに宿泊していただく予定になっているので、その間に時間でハイエースから全ての部品を外す作業を行います!
車体下に装着されていたリフトの取付補強金具などは、室蘭の潮風に5年間さらされ、想定以上にボロボロに錆びついていました(汗)
イフさん、二人がかりで黙々と架装物を全て急ピッチで取り外していきます。
あっという間に、車内(荷室)はもの家の空となり、普通のハイエース・バンに戻ってしましました(笑)
じゃーん!
実は、今回の移設プランの目玉?でもある「レカロ・ERGOMED(エルゴメド)LD シート 」が事前準備を終えてスタンバイしていました!
今回の移設作業に際して、リフト装置や車内レイアウトなどは全て現状がベストとのことで、それを再現する予定ですが、ただ一つ、、一人がけの座席だけはハイエース純正シート+座位保持装置ではない、もっと安楽に長距離移動が出来るものにしたいというN様の希望からレカロシートのチョイスに至りました。
そして息子様には実際にこのシートに座ってもらいながら、最もベストな座面高を確認の上、それをハイエースの車内で再現すべく位置関係の精査確認をするというのが今回のN様ご家族来店のもう一つの目的だったのです。(部品外しだけであれば、車両を陸送で送ってもらえれば済む話なのです)
翌日、息子様が再度来店される時までにはベストなシート位置関係を再現出来るよう、深夜まで確認や調整作業は続きました・・・
翌日、(写真は撮っていませんでしたが)息子様による最終確認をしていただき、レカロシートの設置位置を確定!
各種装置が取り外されて、すっかり普通のバンになってしまったハイエースで、室蘭にお戻りいただきました。。。
それから2週間後、ピカピカの新車ハイエースがイフの工場にピットインしました!
実際に室蘭に新車が到着したのはもっと前だったとのことですが、この間で車両購入先である 有限会社ケーズオート様 にて、いろいろな事前準備を進めていたとのことでした。
さっそく取り外したリフト装置を新車に仮載せして新たな取付金具の製作を開始します。
車体下に配置される固定金具などは既存のものの腐食が酷かったことから、全て新規で作り直ししました。
元のハイエース純正の一人がけ座席はバラバラにして、土台部分の一部を切断して再使用します。
レカロシートを装着するための新たなシートレッグ(取付土台)を製作するため、旋盤でこのような段付きカラーを製作し・・・
鋼材で四角を型どったベースフレームに溶接してシートとの接合ボルトを埋め込みました。
元のシートレッグを切断した部分を新たに製作したベースフレームに接合しながら高さの調整を行います。
高さが確定した後は、次々と補強や取付部分を溶接して製作していきます。
レカロシートを設置するための土台部分(ベースフレーム)の形が完成しました♪
こちらは新たに新品で用意したハイエース純正の三点式シートベルトです。
機能的には前回装着した物でも良いのですが、車両の年式に合わせた最新の規格をクリアーした製品でなければ構造変更検査に合格することが出来ないため、調査の結果やむなく新品のトヨタ純正部品を購入することに相成りました。
前回(5年前)とは座席ベルトに求められる構造要件も変わっているため、今回は三点式シートベルトを取付するための部品は強度証明がされたメーカーの部品を採用させていただきました。
それらのシートベルト部品関係を最適な位置に配置していきます。
レカロシートやリフト装置が仮付けされた状態になりました。
ここで、同時進行でリフト装置の劣化部分のメンテナンスも行わせていただきました。
新品の「ドレンプラグ」や「フラッパー解除スプリング」
昇降シリンダーもシャフトの摩耗から油滲みが発生していたことから、先々を考慮してアセンプリで新品を用意させていただき、交換することになりました。
もちろん、作動油も全て入替えてリフレッシュ♪
電源を仮投入して作動チェックをしながら、各部のメンテナンスを進めてゆきます。
プラットフォーム(リフト床部分)の後ろに付く、フラッパーのロック機構等も加工しながらリフレッシュ♪
プラットフォームの表面プレートも一旦取り外しをして内部まで清掃いたしました。
リフト本体のベース部分も錆が出ていたことから、塗装を施しリフレッシュ♪
車いすが常に上を通るカバー部品なども、しっかりウレタン焼付け塗装でリフレッシュ♪
新たに製作したレカロシートの取付土台も、しっかりウレタン焼付け塗装を施させていただきました♪
全ての部品の製作やメンテナンス作業を終え、いよいよ装置の本取付に入ります。
前回はDXグレードの純正ビニールフロアマットを汚れ防止にひきましたが、今回は更に耐久性の高い専用素材を使った社外品を購入し、床全面に敷き詰めました。
先ずは、レカロシートと三点式シートベルトの本固定!
続いて、車いす固定装置の本固定!
最後は、リフト装置の本固定!と作業が着々と進行します。
これらの部品を固定するため、車体下に配置される部品には全て防錆塗装を厚塗りし、塩害に耐えるように配慮しました。
さらにはウレタン系のコーキング材をしっかり塗布し、当て板を装着した上からチッピングコートを重ね塗りするなど、かなり厳重な錆止め対策を施しました!
リフト装置の作動用電源もしっかり配線を済ませ、移設(バージョンアップ)作業は全て完了です!
前回同様、各部が機能的にまとまったリフト配置は使い勝手が抜群です♪
前回の改造写真と見比べていただくと左側の手すりが無いことが解りますが、5年間の使用過程で邪魔ということで外してしまったそうで、そのこと一つとってもとても参考になることが多々ありました。
今回の目玉であり、唯一前回からグレードアップした、レカロシートを採用した一人がけ座席!
レカロ・エルゴメドシートは座位保持性能も高く、安楽なポジションで長距離移動が出来るようになったことは間違いありませんね!
息子様が使われているようなアクティブ系の車いすとシートの配置はベストマッチです♪
それでは、完成した雰囲気をじっくりご覧ください。
完成後は早々に陸送業者様にて、車両は購入先である室蘭のケーズオート様に移動。
車両が室蘭に到着した後を見計らい、イフの木戸口チーフメカが室蘭に単身出向き、ケーズオート様のサポートを受けて室蘭陸運支局へ構造変更検査を受験するべく臨みました!
ホームである帯広陸運支局とは少し異なるアウェイ(室蘭陸運支局)では少々戸惑うこともありましたが、淡々と構造変更検査を受けてゆきます。 あ・・・ヘットライト左側がNGだ、、、(汗)
少々、車両整備部分で手こずる部分もありましたが、肝心の改造部分については全く問題なく審査を合格し、めでたく「車いす移動車(8ナンバー登録)」が完了いたしました。
N様の希望ナンバーが取り付けられた新車ハイエース!
この後は、車両購入先である 有限会社ケーズオート様 に車両を一旦引き下げてもらい、最後の美装を済ませてあとでN様に納車していただく流れとなりました。
N様ハイエースの移設作業の記事はいかがでしたでしょうか?
思い起こすと、2005年の江別市のS様のステップワゴンに取付させていただいた「車いすリフト装置」でしたが、ご縁があって室蘭市のN様が譲り受け、所有していたハイエースに装着したのが2011年、それから今回の新車への移設が2017年ですから、からこれ12年以上の休む間もなく元気に活躍しているということになりますね!
福祉車両への改造はこのような使い回しが出来るケースも多々ありますので、考え方によってはかなりリーズナブルで経済的なのかもしれませんねぇ。。。
To be continued・・・
それから暫く経ったある日・・・
N様から連絡があり、「イフさんにお願いしたら、息子の新しい車いすを作っていただだけるだろうか?」との嬉しい相談をいただきました!