イフで10年以上前から取り扱いをさせていただいている、トーシンテック製の【バス用 電動大型補助ステップ 】をホームページで紹介させていただいたところ、本州の整備事業者様から「製品をイフさんから購入して、自分たちでも取り付けすることが出来るだろうか?」「どんな感じで取り付けするのか、参考になる写真などがあれば提供して欲しい」という相談がありました。
そこで、普通にメールで添付写真を送って、文章であれこれ説明するよりも、ブログ記事で取付作業の模様をお伝えした方がイメージが伝わりやすよなぁ。。。と考え、急遽このブログ記事を夜な夜な書かせていただきました♪
本邦初公開!(おそらく日本初?!)、バス用 電動大型補助ステップの取付作業の全てを赤裸々に公開させていただきますので、ご興味のある方は是非ともご参照くださいませ!
イフで数多く施工させていただいた “バス用補助ステップの架装” の中から、今回は(問い合わせをくださったお客様のイメージに近い)大型バスの前扉(折り戸)に架装した事例をご紹介させていただきます。
事前の打ち合わせを経て、入庫予定日の夜にイフにピットインしたのは「日産・レインボー(H8年式)」
さっそく(残業をして(笑))、翌日からスタートする取付作業の下準備を行いました。ちなみに、写真で乗降口の上に写っているのは、これまで活用していた「踏み台」で、これでは利用する方が不安定とのことで今回の補助ステップ取付をご依頼いただいた経緯がありました。
乗り降りする1段目の高さを計測すると365mmでした。
ひとくちに365mmといってもピンとこないかと思いますが・・・一般的な住宅の階段が210mm程度の蹴上なので、2段飛びとまではいかないまでも、1.8倍ほどの高さを乗り降りしていることになりますので、その高さはかなりなものです(汗)
ツーステップバスの乗降部の床面裏(車体下)はこのような状態になっています。
ドアの開口部(乗降口)に対して適切な補助ステップの設置位置を確定し、マーキングを行います。(中央のマスキングテープは補助ステップの中心位置を記し、左右のマスキングテープは、補助ステップを固定するための貫通ボルトの取付位置をマーキングしてあります)
補助ステップを貫通ボルトで固定するための位置に躊躇なく穴あけをします。
少し幅が広め(幅=100mm)の鋼材(肉厚=4.5mm)を切り出し、補助ステップを固定するための基本穴の他に、鋼材をボディに固定するための周辺の穴を空けていきます。
尚、今回のバスは補助ステップの取付部分の強度が少し弱いと判断したため、このような鋼材を製作して補助ステップの取付用ベースとしてボディと一体化させることで、充分以上の強度を確保する方法としましたが、装着するバスや部位によってはこのような補強は不要で、直接(高さ調整用のスペーサーを介して)ボディ裏に直接固定することも可能です。
鋼板をボディ(乗降口の裏部分)に仮固定します。
長いボルトが出ている部分は、補助ステップを固定するためのボルト類となります。
仮固定された取付部に、補助ステップを合わせてみて、ズレなどが無いか確認します。
補助ステップは少々重たいため、人力だと体を壊しますので(笑)、油圧ジャッキの力をお借りします。
実はこの段階で、補助ステップを装着する高さも(ジャッキを使って上下させながら)検討し、ボディ側の鋼材と、補助ステップの取付部分の隙間を計測する作業も同時に行っているのです。
その結果を元に、無垢の丸棒から補助ステップの設置高さ調整用のスペーサーを削り出して製作します。
(製品キットには、高さ調整用のカラーやワッシャーが同梱されていますので、イフのように1mm足りとも狂いは生じさせないと鼻息荒く無垢材から加工しなくとも、普通はキット内のスペーサー+αで充分対応できますのでご安心ください)
前後左右位置の微調整を終えた後は、前後の鋼材を結ぶための鋼材を追加するため、半自動溶接機で “点付け溶接” を行います。
仮合わせが終わった鋼材を取り外し、歪が出ないように注意しながら本溶接を行います。
このようにボディ裏に追加装着する鋼材を一体化することで、より頑丈な補強になるように工夫しています。
本溶接やバリ取りを終えた後は、下地処理をした上で “ウレタン焼付け塗装” を施します。
ボディ裏で酷使される部分だけに(特に北海道は冬季間の塩カルによる錆を防止する意味もあり)重要な工程の一つとしています。
塗装が完全に硬化した後は、いよいよ本取付作業です。
ボルト類は製品キット付属のものは使わず、別途用意したステンレス製のボルトを使用し(サビ防止)、ロックタイト(ネジ緩み防止剤)を塗布して固定していきます。
また皿ネジボルトを使うことで、踏み面にボルト頭が出ずにフラットになるような配慮もしています。
ここまで来ると、補助ステップ本体の固定作業はネジを締めるだけと超簡単です♪
あっさり補助ステップ本体の本固定が終わった後は、配線関係の作業に移ります。まずはメインハーネスを車内に引き込む(通す)ための穴をボディに空け、防錆塗装を施します。
その穴に、製品キット付属のメインハーネスを通し、防水ブーツで完全密閉して水や埃の車内への混入を防ぎます。
朝からスタートした作業でしたが、すっかり辺りは暗くなってしまいました(汗)
もうひと踏ん張りと、木戸口チーフメカが内装部品を分解しながら配線関係の作業を頑張っています。
バス用 電動大型補助ステップは、車種専用品ではなく「汎用製品」のため、配線関係の取り回しはセンスの見せ所です♪
今回、木戸口チーフメカはグローブボックス裏のこのスペースに補助ステップを作動させるためのメインコンピューターを設置したようです。
補助ステップの作動のON/OFFを切り替えるためのスイッチと、ステップが展開している状態を表示するランプを設置するのですが、既存の盲蓋にそのまま取り付けするのは芸がない(木戸口メカ談)とのことで、知らぬ間にアルミの板材を切り出して、このような ↓ スイッチプレートを製作していました(笑)
製作したプレートにマットブラック(つや消し黒)の塗装を施し、スイッチをキット付属の銘板と一緒に取り付け、その右横にインジケータランプを取り付けました。
それぞれの配線を、盲蓋を外した部分の穴から通して・・・
こんな素敵なスイッチパネルが完成しました♪
写真の上に写っているスイッチとランプは、バスの前扉を開閉するためのスイッチと開状態を知らせるランプなのですが、それに似せた雰囲気で製作してみたとのことでした。(木戸口メカ談)
バス用 電動大型補助ステップは、そのスイッチを「ON(ステップ連動)」にしておくと、前扉の開閉に合わせて、補助ステップが自動的に展開&格納され、展開時(出ている時)は「ステップ警告灯」が光るようになっています。
スイッチを「OFF」にした状態では、前扉が開閉しても補助ステップは作動しないため、縁石近くに停車した場合(その状態でステップを出すと、縁石等にぶつかる危険性がある場合)や、ステップが不要なお客様の場合などはステップを使用しないようにすることも出来るのです。
確かに、自然な仕上がりで美しいですが・・・まさに器用貧乏とはイフのことかも、、、(ToT)
ステップにまつわる余談ですが、トーシンテック製の電動補助ステップは、万が一の電気系やモーター系のトラブルでステップが格納出来ない状態になった場合などは、ステップ本体のギヤボックス部分に「電動と手動の切り替えレバー」が配備されていて、これを手動方向に切り替えることで、ギヤがニュートラル(モーターと切り離される)仕組みになっていて、人力で補助ステップを格納して(一時的にタイラップや紐で縛り付けておいて)その後の修理をするということが出来るようになっています。
最後の仕上げは、イフで寒冷地対策として有償オプションで施工させていただいている「スプラッシュガード」の製作&取付です。
北海道のような積雪地域では、走行中に雪などが補助ステップに氷着してしまい動かなくなるケースがあるため、このようにEVAシートで補助ステップの前後を覆うようなガードを製作することで、そのリスクを軽減させる効果があるため、有償オプションですがお薦めさせていただいております。(積雪地域ではない本州の方には無縁かと思われます(笑))
じゃーん!完成です♪
こちら、ステップ格納状態です。
そしてこちらが、ステップ展開状態。
展開した補助ステップの踏み面高を計測すると、約170mmとなり、元々の乗降口が約365mmだったので、ほぼ1/2の高さになりました♪
踏み面の面積も充分広いため、バスを利用する方が安心して乗り降りできることは間違いなしです♪
この補助ステップを装着させていただいたバスが、十勝で活躍することを願い、お客さまに納車させていただきました! ありがとうございます!