頚椎損傷の方から「自分一人でクルマに乗り降りして、自動車運転をしたい!」という相談を受け、手動運転装置などの改造をさせていただきましたが、その改造内容の一つに「助手席と運転席の行き来(移乗)を楽にしたい」というものがあり、今回はその部分の改造作業をクローズアップしてご紹介させていただきます。
一般的に自動車を運転する場合は、運転席側のドアから乗り降りするかと思いますが・・・
その運転席への乗り降りが容易では無い方の場合は「サイドサポートシート 」などの乗降車を補助するカスタマイズを行いますが、今回のお客様の場合は事前の検証でそれが難しい状態でした。
https://e-if.jp/welfare_vehicle/transfer_support/side_support/
そのため、クルマ選びの段階で助手席リフトアップシート(助手席が回転して、車外にせり出し、昇降するタイプの福祉車両)が装着された車を購入し、そこから車内に乗り込んだ後で、助手席から運転席へ移乗するという方法を提案させていただきました。
結果、お客様が購入した車は、イフでも定番となりつつある「トヨタ・ポルテ・ウェルキャブ仕様(助手席リフトアップシート車)」となりました♪
しかし、お客様は受傷してから数年しか経過していないということもあり、まだ体のバランスを自由にコントロールすることが難しく、標準状態の運転席&助手席の状態では、その間の移乗動作も容易ではなかったため、より安楽に運転席へ移乗ができるようにしたいとのことで、今回ご紹介する「座面フラット改造」を施すことになったのです。
この写真は改造前の状態ですが、座面両端の盛り上がりが、お尻の移動の大きな妨げになっていました。
加えて、助手席リフトアップシート車は、標準の座席より座面高が若干高く、さらに座面両端の盛り上がりも大きいため、想像以上に移乗の妨げになっていたのです。
運転席と助手席の間の隙間も曲者(くせもの)で、スッポリお尻が落ちてしまうので、トランスファーボードなどの併用や工夫が必要そうです・・・
こちらは、運転席を外した状態です。正面から見ると座面はフラットではなく、両端が盛り上がっていることが確認できます。
運転席側の座面改造の第一段階は、助手席(リフトアップシート)との高低差を少なくする必要がありますので、チップスポンジを座面下に挿入し、厚みを調整しながら座面高を揃えさせていただきました。
助手席との移乗を容易にするため、運転席の左側の凸部を除去してフラットにするため、内部のスポンジを肉抜きカットして高さを下げていきます。
普通であればスポンジの表面を削ればよいのでは?と言われそうですが、今回のポルテの運転座席の構造は、それをするデメリットが諸々ある(話が長くなるので、その理由は割愛しますが)と判断したため、手間はかかる方法ですが、このように中間部分のスポンジを肉抜きする手法を敢えてとらせていただきました。
肉抜きの微調整が完了した後は、特殊な接着剤で内部スポンジを接着し、元のように一体化させます。
仕上げは表面カバーを適切なテンションで引っ張りながら固定すると、フラット座面の完成です♪
他地域の改造業者様の中には、内部スポンジは加工せずに、表皮を無理やり引っ張って擬似的なフラット座面を形成する?という話もあるようですが、表皮等に負担がかかることや、圧縮されたスポンジの硬度が高まり違和感が大きくなることなどから、しっかり内部の改良を施すことが理想的とイフでは考えています。
こちらは助手席リフトアップシートから座席部分を取り外した状態です。なかなかお目にかかることのない風景ですので、とくとご覧ください(笑)
取り外された助手席リフトアップシートの座席部分です。
表皮を剥がすと座面端の凸が運転席のそれより大きいことが確認できます。
先程の運転席はスポンジの中抜き加工を施しましたが、この構造のシートの場合は表面の凸部をカットしてフラット座面を形成してゆきます。
一発では決まらない作業のため、徐々に・・・でも、大胆に、カットしていきます!
ジャストな高さになった後は、スポンジ研磨用の加工機材を使って綺麗な形に整形します♪
クッションが薄くなり、その下のフレーム部分との隙間が薄くなりすぎて違和感がある部分については、更にシート内部の金属フレームも加工をしながら、すべての箇所において、適切なクッション性を確保するということを実現しています。
そして助手席シートは運転席側と隣接する右側がフラットになりました♪(元の写真と是非とも見比べてください)
他にも、このブログでも書ききれない(書き始めるときりがないので、かなり割愛)細かな加工や創りものを繰り返しながら・・・
じゃ〜ん!完成です!
運転席と助手席、それぞれが高さも揃い、フラットになりました♪
更に、写真をご覧になってわかるように・・・(座席の間の隙間が無い!)
元々は小さかった、運転席のアームレストを改造して、背中部分の隙間を埋める役目を担うように配慮させていただきました!
運転席へ移乗した後は、通常の肘掛けとして使うことで、運転中の姿勢保持や、手動運転装置を操作する際に、肘をしっかり乗せて安定したコントロールが出来るようにも配慮させていただきました♪
そして、その肘掛けの下に見える(元々は無かった)運転席と助手席の隙間を埋める何かが装着されています!
これは、トランスファーボードなどを都度使わなくとも、隙間を埋めるボックスを常設したことで、移乗動作を安楽にしていただくことが出来るように配慮したものです。
モチロン!ただの箱ではもったいないので、中には色々なものを入れることが出来るセンターコンソールの機能も有した、特注品となっています♪
最後は、既にお気づきの方もいるかと思いますが、運転席と助手席のシートベルトのバックル部分(受け部分)は、その可動範囲を拡大する改造をさせていただき・・・
移乗の際には、それ(バックル)が邪魔にならないように座面横に格納できるように改造し、かつ、それを引き出すためのストラップを装着しているのです♪
助手席リフトアップシートから、運転席まで、フラットでスッキリとした動線が確保出来ているのがご覧いただけますでしょうか?
今回は、トヨタ・ポルテの助手席リフトアップシート車をベースとした、ちょっと変わった?座面改造だったかもしれませんが・・・
このような座面のフラット化を、運転席であれば右側、助手席であれば左側に施すことで、更にクルマの乗り降りが楽になるという方も多くいらっしゃいます。
また、この座面フラット改造は、サイドサポートシート を使った運転席や助手席への乗り降りとの相性も抜群です♪
https://e-if.jp/welfare_vehicle/transfer_support/side_support/
ベースとなる車種やグレード、利用する方一人ひとりによって、具体的な施工方法や、その度合はマチマチのため大量生産することはできないオンリーワンのサービスになってしまいますが、このちょっとした?加工を皆さまにも参考にしていただければ幸いと執筆させていただきました。